いぬ

犬を飼った日のことをまだ覚えてる。ずっと別の犬種を飼うことを夢見ていたのに、犬を見たときに絶対に家に連れて帰りたいと思った瞬間のことを。

小さな箱に入れられた犬を早く見たくて箱の隙間から覗いたら真っ黒な毛がピカピカ光っていた。小学一年生の手のひらにおさまるくらい小さくてモップみたい。どうしてこんなにかわいいんだろう。父親が変な名前で呼んだ時にやっと振り返ってくれた。その変な名前を呼ぶのが恥ずかしくて、散歩中に名前を聞かれたときに違う名前で紹介してしまっていたときの違和感。

全然私にだけ懐いてくれなくておおきくなっても私の部屋では一度も寝てくれなかった。私のことを見下していただろうから、気まぐれで私の背中に乗ってくれた時には大喜びして家族に写真を撮ってもらってたんだよ」。舌が長くてよく先の乾いた舌を出したままにしていた。それをちょんちょんって触ったりしてたから?もうあと100回触りたかった。


犬を連れて帰るとき、お母さんとよくある約束をしたと思う。それがなんだったのか今は思い出せないし多分全然守れなかっただろうけど、あのときなんとしてでも連れて帰りたかった犬と一緒に過ごせて本当に良かった。

短い尻尾を振りながら階段上で待っていてほしい。机の上で生クリームを舐めている犬の写真を見ながら思い思いに買ってきたケーキを今日はみんなで食べるからね。

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